「訴状をよく見てコメントしたい」の意味
カテゴリー:法律余談 更新日時:2016年8月24日
よくマスコミで、〇〇社を×の件で、△△団が訴えましたって報道がありますね。
そのとき、訴えられた企業や人が「訴状をよく見て検討したい」とよくコメントしますね。
これって、一般の人にどこまで真意が伝わっているのかがとても疑問です。
訴状は、訴える人(原告 げんこく)が請求したい事柄と請求できる根拠、理由を記載した書類のことです。裁判所と訴えられる人(被告 ひこく)用に作成して裁判所に提出します。
ポイント
① 「訴えた」とは、裁判所にこの訴状を提出したときのことを言います。そのとき、裁判所(受付)に被告用の訴状も提出されていて、被告の手元にはまだありません。
② その後、裁判所(受付)が訴状の内容をみて、一応のことが書いてあるか検討します。このとき法律にてらして認められる(法律判断)とか、事実があるない(事実判断)はしません。とりあえず形式が整っているかの判断といえます。事実の有無など裁判所に分かるはずがありませんし、法律判断は担当する裁判体(裁判官)の役割です。
③ その後、担当する裁判体(裁判官)に配属され、そこから被告に郵送されます。
④ 被告に対し、裁判所での期日(裁判本番)が指定され、反論をする機会が与えられます。
⑤ その後、法律にてらして認められる(法律判断)とか、事実があるない(事実判断)が裁判体(裁判官)から、判決と言う形で示されます。
マスコミは原告の発表なりで①のことを知り、被告に取材に行くのです。②③で数日はかかりますから、被告は「訴状をよく見て検討したい」とコメントすることになるのです。
ほかに「訴状をみていないのでコメントできません」ってコメントもありますが、これはそのまんまです。
法律に携わっているものとして、「そりゃそういうよ」としかコメントしようがありません。
もっとふみこむなら「訴状が届いていないのでコメントできようがありません」というコメントがほしかった(笑)。
では、マスコミ取材としては、④のあと、被告に「コメントありますか」と尋ねるのもありでしょう。でもほとんどは④で指定された期日当日での被告の反論内容の報道になってしまっていますね。新聞、テレビの速報性という性質から、①の取材が意味がないとはいいません。しかし、裁判の仕組みを知らない人から見れば、被告がコメントできるのに「ノーコメント」をしている、時間を稼いでいる、と誤解されかねませんよね。
残念ながら、あやまった印象を時には与えていると思います。
実際のところは、こんな事情があるのです。